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会誌『建築士』に寄稿しました

建築士の組織としては日本最大の「建築士会」。

一級・二級・木造建築士の有資格者で構成され、発行部数は8万余部に及ぶという建築界で最大の会報誌に、お声がけをいただき寄稿しました。

文章を書くことなど苦手という意識しかない私でしたが(笑)、アトリエ兼自宅『LUCE』建築から感じたことを書きました。

つたない文章ですが、お読みいただけたら幸いです。

 

建築とエネルギー 

オフグリッドな暮らし

古くは鋳物の街として知られた埼玉県川口市の市街地に家を建てて2年になる。近隣では一般的な30坪の土地、両隣の家は手の届く距離にあり、裏は鋳型の工場があるこの街らしい場所だ。アスファルトに覆われた道路に囲まれ、猛暑の夏は外の温度計が50℃を指していて驚いたことがある。近くの荒川が氾濫すると3~4mの浸水域にあり、気候変動もリアルに感じている。私はこのふつうの土地にふつうの家族が電気エネルギー自給自足のできる家を建てたいと考えた。
 設計は屋根から始まり、太陽光パネルと太陽熱温水器を載せ、少ないエネルギーでかつ気持ちよく暮らせるよう設計をした。地域の木材を使い、木の断熱材と木窓、調湿性のある壁、Ua値0.46の家は、夏は1台のエアコン、冬はペレットストーブ1つで一年中、快適な温度と湿度を保っている。
 生活もいままでと変わらず、家電も一般家庭と同じように一式あり、電気の恩恵にあやかっている。普段は蓄電池からの電気で生活し自給生活をしているが、秋の台風の時期に年に1~2日、蓄電池が底をついてしまうときがある。そんなときはアナログの切替機をガチャっと倒して、ありがたく遠くからやってくる電気を使わせていただくが、排熱や送電ロスが6割にもなると聞くと、なるべく自給した電気で生活したいと思う。日本のエネルギー自給率は10%程で、1年に20兆円も海外からエネルギーを買っている。これでは子どもたちが暮らす未来の日本
が豊かになっている姿は描けないと思う。
 この暮らしをして変わったことはたくさんある。まず太陽の動きや天候にとても敏感になり、太陽から四季を感じるようになった。街中のこの限られた土地にも自然のエネルギーがふんだんにあることに気づかされた。エネルギーを可視化するため売電もしているが、自給率は200%近く、当初の目標は軽くクリアしてしまった。長雨の後の太陽は本当にありがたい。エネルギーのない貧しい国? いえいえ、森も水も豊富にある豊かな国です、と胸を張って言える。そして一番の宝は同じ想いをもつ仲間がたくさんできたことだ。太陽とともにある暮らしは豊
かで楽しい。

AtelierBio 新井かおり

 

建築士のお仲間が増えて建築の世界にもオフグリッドの考えが広まること、自然エネルギーを生かした建築が当たり前になることを願っています。

建築士会担当者の方々、この度はお世話になりました。

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